江戸時代から続く老舗「吉宗」は来年で創業100年という節目を迎える和食店。時代が移り変わっても、受け継がれてきた伝統の技と味を守り続けている和食店です。中でも看板料理である茶碗蒸しは、創業当時から変わらぬ製法でつくられており、長崎の風土と職人の心意気を感じさせる逸品。坂本龍馬もその味を愛したと語り継がれているのが、歴史の重みを感じさせますね。

茶碗蒸しといえば、卵のやさしい口当たりが魅力ですが、吉宗の一品を特別な存在にしているのは具材の豊かさです。海老、穴子、鶏肉、しいたけ、きくらげ、銀杏、たけのこ、そして二種類の蒲鉾に加えて麩と、合計9種類もの食材が彩りよく盛り込まれています。それぞれの具材が持つ旨みや食感が調和し、一口ごとに異なる味わいが広がるのが特徴です。単なる蒸し物ではなく、一椀で豊かな物語を味わえる料理といえるでしょう。

そして、この茶碗蒸しの土台を支えているのが出汁です。吉宗では、北海道利尻産の昆布と鹿児島枕崎産のカツオ節を中心に独自の配合を行っています。利尻昆布は澄んだ海水が育む上品な旨みが魅力。雑味がなく、後味がすっきりとした出汁に仕上がるのが特長です。一方、枕崎のカツオ節はコクと甘みがしっかりしており、口に含むと深い味わいが広がります。この二つを組み合わせることで、まろやかさと力強さを併せ持つ出汁が生まれ、吉宗ならではの味を形作っているのです。

また、出汁に加える醤油の加減も絶妙です。醤油の塩味が昆布とカツオ節の旨みを引き立て、全体を引き締めています。控えめながらも存在感があり、最後まで飽きずに楽しめるのは、この調和があるからこそ。古くから受け継がれてきた配合を守りながらも、その時代ごとの味覚に合わせて繊細に調整してきた職人の工夫が垣間見えます。

吉宗の茶碗蒸しは、ただの料理ではありません。九つの具材と伝統の出汁が一体となり、長崎の文化と歴史を語りかけてくれる存在です。老舗という言葉にふさわしい風格がありながらも、どこか家庭的で懐かしい温もりを感じさせる一椀。訪れる人々に安らぎと驚きを与えてくれる、その味わいが多くの人に愛され続けている理由でしょう。

来年で100年を迎える吉宗。その茶碗蒸しは、これからも変わらぬ姿で人々の心と舌を満たしていくはずです。歴史とともに歩んできた伝統の一椀を味わうことで、日本の食文化の奥深さを改めて実感できるのではないでしょうか。



　

今回は吉宗を紹介しました。

旅行やお出かけにピッタリですし、 一生の思い出に残る名スポットですので是非訪れてみてください。

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